わたしは細胞、みんなで一つのいきもの
一晩だけの音と光の祭典に、増上寺へ行ってまいりました。
オリンピックイヤーを文化の祭典にもしよう、ということで開催された ‘TOKYO TOKYO Festival Special 13’ の一環でおこなわれたスペシャル・プログラムです。
アーティストは、真鍋大都。
パフォーマンスは、Perfumeの振付でもおなじみMIKIKOさんが率いるELEVENPLAY。
会場は、増上寺。
門前のバックに東京タワー。
これだけで、あえて来るとワクワクするヴェニューです。
さらに、入口で、各自が手元にもつデバイスの風船をわたされて、大興奮!
風船がまるで、ぼんぼりか、行灯のようなのです。これが1000個ならぶと、まるで細胞があつまってひとつの生き物になってるよう。互いに細胞呼吸しながら、うねる芋虫か、ゴジラか(東京タワーの真下だったから)、はたまた龍なのか。
この「わたしは細胞、みんなで一つのいきもの」という体験が、妙なテンション(緊張感)とミッション感をもたらします。
私たち(細胞たち)の動きをみてると、会場は3箇所に分かれていて、どこを歩いても良いはずなのに、なぜか、タワーが見える一番モニュメンタルな門前前にたむろって止まっています。
止まっているうちに、そこにいることに飽きてまた動き出す。回遊が起こる。
など、なかなか、興味深い現象がみられました。集合意識を研究するにはもってこいです。

基礎研究でアート?
途中、elevenplayが、その中に入ってきて、デジタルダンスを踊ります。
身につけてる衣装が、「白」の着物風なので、どうしても日本人には巫女に見えるのですが、そこはお寺なのであった。巫女が寺でデジタルダンスだと、どう「?」と不一致感がぬぐえない。
だとしたら、極楽浄土にすむ鳥「迦陵頻伽(かりょうびんが)」だと思ってみたらどうだろう?それは、楽しい。ならば本当は衣装は極彩色だな…。でも、バルーンのライトを際だたせるために白なんだろうな… などなど。ダンスパートは、何も考えずに楽しむはずが、みていてどんどん思考が出てきて少々疲れてしまいました。
今回は増上寺という定点スポットが異変する面白さでした。
これを極めるも面白そうですし、あるいは、新宿御苑のような会場を練り歩き、途中に森があるとか、広場があるとか、動きがあるのもありなんでしょうか?
さらに、参加に特殊な「緊張感」をともなうため、それを最後まで持続させる工夫か、あるいは休憩・離脱したい時にかるく呑めて一線を引けるなど、どちらかにグイッと寄せると、より体験が濃厚になるかもしれません。
というわけで、基礎研究であり、アート(応用研究)でもある興味深いイベントでした。
ところが、面白かったのは、イベントから帰ってから。

残像感の理由
「あれ?」という残像感があった。
さらっとしてたはずなのに、重層感が残ってた。
後から、この重層感はなんだろう?と思ってウェブサイト調べてみた。
すると、デバイスの「バルーン」は、これで参加者の位置情報を共有するのかと思いきや、否。でした。
もっと、何層にも情報処理されてたのです。
事前解析されている、増上寺の建築データや地形データをプログラミング(コード)で光と音に変換するための情報を埋め込んだ場(フィールド)を仮想空間に生成
↓
目に見えないその情報をライゾマティクスが独自に開発したバルーン型デバイスを用いて現実空間で光や音に変換
↓
大勢の参加者が広範囲な場所で同時に楽しめる体験型インスタレーション

ということ。
一晩置いて、自分の感覚に芽生えたもので気づいてから、結構チャレンジグな試みだったんだ!とあらためて興奮しました。
バルーンの色とライト・音楽という五感の刺激は意外と慣れてしまうものですが、明らかに見えない膨大な情報空間にセンサーがのびた気がします。
基礎研究された科学分野で、どしどし再生医療やリチウムイオン電池などノーベル賞レベルの成果が出ている日本。こういった観客を入れながらも革新的チャレンジをおこなうプロジェクトは応援したいです!
今後の展開も楽しみです。
Light & Sound Installation
Coded Field
歴史と伝統のある東京・港区芝の浄土宗大本山増上寺とその周辺を舞台に行われる、光と音が織りなすパブリックアートプロジェクト。Rhizomatiksの真鍋 大都(アーティスト)が体験型インスタレーションを企画制作。パフォーマンスを演出振付家MIKIKO率いるダンスカンパニー「ELEVENPLAY」が行った。
▶︎ オフィシャルサイト
梅澤さやか

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