なんて可愛らしい帯留め….!
見つけた瞬間、このために着物を着たいと思ってしまった「見た目から入ります」「でもちゃんとしたものが好きです」という正統派・着倒れ・モノ好き道楽をつらぬいてる筆者が出会ったのが
tomohito matsubara のシルバーの帯留めです。瓢箪(ひょうたん)!

銀座四丁目・和光での出会い
出会いは、こんなでした。
今年こそは、着物を着たい!と言い放ってた矢先、お茶・お能・お着物など好奇心の赴くまま自由に楽しむ編集者・Iさんのお誘いで立ち寄った和光ホールのジュエリー展でした。
昨今は、あまりにも多くの観光客でかつての「小粋さ」が失われかけていたとはいえ、ここは花の銀座4丁目。三越のライオン像で待ち合わせ、鳩居堂で葉書を買い、木村屋のアンパンを選び、さあ和光の時計を見ると東京は午後の3時。
お茶でも飲もうかしら、もちろんラデュレなどではなく、和光のティーサロンでですよ…..!そんなウキウキが反射的に起こるのが、銀座4丁目という場所のマジックなのです。
待ち合わせのIさんが遅れるというので、先に6階のホールにエレベーターを上がると、14ものジュエリーブランドが素敵な展示を披露されてました。
Iさんを待ちながら、手前のブースからパトロール。試着をしては、作家さんのお話を聞く私。こういった合同展示では、オーナー/作家さんご自身が立たれているため、制作秘話を直接伺えたり、コーディネートの相談ができたりと楽しいです。
ただし、あまりにも混み合っていたり、若者が多かったりするイベントだと落ち着かなく、それも叶わない。和光ホールの催すですと、ホールの内装もまるで高級ホテルのようにシック。大人も落ち着いて好きなものを見つけたりお話しできますので、とてもよかったです。
吉祥文様の瓢箪(ひょうたん)、瑞雲(ずいうん)
そんななんだで、はたとあるブースの前に立ち止まった私。
そこには、小さなシルバーの銀線細工の帯留めが、整然と並んでいました。
他のモダンジュエリーとはちょっと違う雰囲気。丹精に作られたモノが出す特有の澄んだ輝きに、磁石のようにスーッと吸い寄せられていきました。
小さい・・・細かい・・・かわいい・・・
あ!瓢箪(ひょうたん)!
そこで見つけたのが一番上の帯留めです。
こんな瑞雲(ずいうん)も!

瓢箪(ひょうたん)も、瑞雲(ずいうん)も吉祥文様です。
瓢箪(ひょうたん)は、子孫繁栄、厄よけ。さらに6つ合わせると六瓢(むびょう)にかけて無病息災の意味も。


瑞雲(ずいうん)は、おめでたい時の兆しで現れる五色雲。阿弥陀如来もこれに乗ってお迎えにきますね。日本ではこれがみられた時に改元を行った事例が3回あるそうです。
四季折々の身支度を楽しくしてくれる愛おしさ。
作品は、どれも日本の伝統的な文様やモチーフ。
吉祥模様/縁起物のほかにも、椿・蝋梅などのお花もの、貝・珊瑚・タコなど海もの、隠蓑・酒樽・傘などの生活風習ものなど。1つ1つが四季折々の身支度を楽しくしてくれる愛おしさ。
遅れてやってきたIさんもかぶりつき!
ついに瓢箪(ひょうたん)を購入されました。Iさん曰く、こういう遊びごころのある帯留めは、格式ある着物には合わせず、洋服の延長線上でコーディネートする日常のお着物に合わせてカジュアルに楽しむそうです。粋ですね。
帯留めだけではなく、かんざしや櫛などの髪飾りもあり。帯留めをされない方は帯飾りとして楽しまれたり、ご自分の着物に合わせて飾り房をオーダーされる方もいらっしゃるそうですよ。
そして、こういったモチーフは男性もお好きなのでは?
男性はラペルピンにされる方もいらっしゃるそうです。

デザインとしての銀線細工
この小さくも可愛らしいジュエリーを生み出す作家は、松原 智仁(まつばら ともひと)さん。ジュエリーは銀線細工という技法を使っているものがほとんど。秋田県の伝統工芸の技法です。
松原さんにうかがうと
「私は彫金を独学でやってきたので、銀線細工も色々と調べながら作っています。デザインの一部として使うことで、作品のアクセントになる様な作り方をしています。瓢箪もそんな使い方ですね。」
と丁寧に教えてくださいました。
技法から形が生まれるのではなく、形に技法が包み込まれているからか、控え目で洗練された造形が生まれるんですね。
今回、この記事のために松原さんから銀線細工ジュエリーの工程を教えていただきました。
① 材料の銀線

①:
「銀線を2本縒り合わせて縄状にします。この縄目が銀線細工独特の表情を作り出します。0.1〜0.8㎜の銀線をよく使い、縄状に縒るのに使用する銀線は0.1〜0.3㎜と形や大きさによって使い分けます。縒り合わせていない銀線は、縒り線の周りを囲ったり、と使用します。」
②造形

③造形つづき

②③:
「銀線をやっとこや指先を使い渦巻き状にしたりして、花や葉、または作りたいデザインに合わせて様々な形にしていきます。「やっとこ」とは金属を曲げたり、挟んで固定したりする道具。先端も使いやすい様に加工します。」
④溶接

⑤溶接つづき

④⑤:
「作ったパーツを組み合わせて、火を当てて溶接していきます。渦巻きにした縒り線は、ぎゅっと密度を濃くして巻く事で、縄目をより際立たせます。」
こうやって拝見すると、あまりの細やかさに驚きますね….!
松原さんの作る銀線細工ジュエリーは、全国各所で巡回展示されています。実物の小さくかわいらしくもエレガントな造形を手に取ると、なんだか自分が平安貴族になった様な優雅な気持ちになります。
最新の情報は、松原さんのインスタグラムのプロフィールからご覧ください。
INFO
松原智仁 / tomohito matsubara
▶︎インスタグラム
▶︎公式ウェブサイト
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