東京・青山一丁目にある呉服店【青山八木】さんで開催中の《 牧山 花 織物展 》にうかがいました。自粛期間中、生で美しいものをみたくて心から楽しみにしてました。
どこまでも、薄くやわらかく軽い夏の着物。天女がまとうに相応しい透明な空気がただよいます。ひとたび、人が纏えば、その美しさを引き立てることに奉仕する無私の清らかさを感じます。
縞から、最近増えてきた無地まで、全部で12点の反物は、1点仕上げるのに1ヶ月かかるため、丸1年分の作品です。 コーディネートする帯によって、まったく表情が変わります。これは八木さんが、あえて、産地、糸、織り方、まったく異なるものをあわせてるそうで、毎日変えてるとか。
青山八木さんのインスタグラムでは、毎日のコーディネートを動画でみられます。
花さんが作るのは夏の着物の反物のみです。素材は、絹と麻の天然素材、染めは草木染めによる天然染料を用いて、デザイン、染め、織りの工程まで、すべて一人で行ってるのが特徴。 洗練をきわめるまでにも、歴史がありました。
花さんは、京都で染色を勉強してから、宮古にわたり3年間 宮古上布の技術をマスター。1年間、ヨーロッパからアジアを旅して後、2000年から湯河原に住まい、テキスタイルアーティストとして活動してました。
ここから先は、八木さんからうかがった話です。一転、彼女かきものを作り始めたのは2006年からでした。はじめて八木さんが花さんの織物をみせていただいた時には、まだ硬く重い生地だった。
その次に、花さんが八木さんのもとにやってきたのは、それから3年後。最初の織物から驚くほど進化していました。そこからお取扱がはじまります。
きものを作り始めた最初の生地からすべてのアーカイブを保存していた花さん。去年《箱根菜の花展示室》では、10年の反物100点を展示。初期からご存知の八木さんは、感無量だったそうです。
作り手の年月とともに完成した美しい織物。
青山八木さんの展示は、あした6月20日(土)まで。12時から午後7時までです。今日あしたは花さんも在廊されてます。捉えどころのない美しさについて思いを馳せる前に、ぜひ美しいもの、そのものに触れてください。
八木さん、いつも色々教えてくださってありがとうございます。
八木さんが教えてくださった着物のあれこれ
──その一 // 最初の着物は、春、夏、秋、冬、季節ごとに、ベストコーディネートの一式ずつを揃える。一見、最も無駄のようだけど、最終的にも最も楽しく・効率的にコーディネートできるようになる。
例えば「色々な着物に合わせられる帯を」と汎用的なアイテムを選ぶと、結局、どの着物にもそこそこ合うけど、無難なものになりつまらない。
最高のコーディネートをワンセットがあると、「この組み合わせがしっくりハマる」という自分のコーディネートの感度も開いてくる。持っているセットが増えていくと、やがてそれぞれの間でコーディネートができるようになっていく。
──その二 // 失敗はして良い。色々きてみる中で、コーディネートを失敗をすることもある。それが何故かがわかることが大切。わかれば、次に正せば良い。それをわかるのは「自分」。自分の中の「美しい」と感じる感度をあげることだけが大事。逆に人に言われることは、全く気にかけなくて良い。
──その三 // 着る人を引き立てて、美しく見せるのが着物。作家が作りたいもの、主張があるものは、そうならない。
INFO
牧山 花 織物展
◉ 会期:
2020年6月17日(水)-6月20日(土)
◉ 開館時間:
12:00-19:00
◉ 場所:
青山八木
〒107-0062 東京都港区南青山1丁目4−2