魂には眼がある《バンクシー展 天才か反逆者か》

《LOVE IN THE AIR》

バンクシー の作品の中で、もっとも有名なものの一つ。マスクをつけた若者が投げているのは火炎瓶ではなく、花束。バンクシーの作品集「Wall and Piece」の表紙になった2005年から数年間、このグラフィックがプリントされたグッズがロンドンの街中にこの作品のDesignが溢れていた。

今、この展示を観られることは必然のタイミングだとすら感じる。

横浜で開催中の《バンクシー展 天才か反逆者か》だ。
2018年からモスクワ、サンクトペテルブルク、マドリード、リスボン、香港の世界5都市を巡回し、100万人以上が足を運んできた。

この記事では「え?バンクシー ?知ってるよ」と言う人も、観に行く価値があると感じたから、この記事を書いてます。それは、展示を体験することでプラトンが言う「魂には眼がある。それによってのみ真理を見ることができる」が、実際に起こるから。

バンクシー 。

おそらく今地上に生きてる「アーティスト」の中では、最も知られる存在の1人ではないだろうか。パレスチナのグラフィティアートから、サザビーズオークションで落札された作品をシュレッダーにかけた事件まで。美術がメジャーではない日本ででさえ、NHKや全国紙がニュースに取り上げるくらいなのだから。

世間を騒がせることにかけては、政治家や芸能人以上に戦略的でポップ。そして政治的。

とはいえ、メディアに断片的に取り上げられる姿だけでは計り知れない「アナーキスト」としての終始一貫したあり方を全方位からキュレーションした見応えのある展示は全70点以上にのぼる。

初期00年代の本当の(?)ストリートグラフィティから、最近の大掛かりなプロジェクト《Disnmaland》(2015年に5週間の期間限定でブリストルに開いたディズニーランドの真逆のテーマパーク)や、メジャー新聞の記事にもなったサザビーズのオークションのシュレッダー作品まで。

なんと、各作品につき1分以上、歴史背景も含めたしっかりした音声解説がついてるのもすごい。1点ずつ音声解説聴きながらみたら70分以上。海外キュレーションはやはりしっかりしているのだ。

そして、それらの作品郡・キュレーション・解説が表している、本当に驚くことには、初期から現在まで、彼は1mmのブレもなく一貫してるということ。コントロール構造の表裏を見透かし、事実を指摘する。

《BLUR/ THINK TANK》

「イギリスのロックバンドBLURのスタジオアルバムのジャケット。2003年5月にリリースされた。背景には、9.11の後にテロとの戦いを大義名分に行われた一連の軍事行動への反戦作品。BLURのリーダー、デーモン・アルバーンはアフガニスタン侵攻では「世界で最も貧しい国を攻撃するなんて、間違いだ」と抗議、イラク進行では反戦を繰り広げた。」

《ブレグジット》

「2017年ドーバーに出現した作品。巨大なEUの旗から作業員が消している星はEU離脱するイギリス。
足場のおおいに隠れて作品を制作したそう。」右にある言葉は”世界をよくすると言う人ほど危険なもの”

《ロイヤルファミリー》

「2001年ロンドン、ハックニー地区に出現した作品。英国王室を漫画キャラクターとして描いている。
BLURのシングル『CRAZY BEAT』のジャケットになった。」

《MONKEY QUEEN》

「CHILL OUT ZONEと言うクラブで披露した。政府の依頼で撤去された。」
《クイーン・ヴィク》

「初期のバンクシー 作品。ヴィクトリア女王を性行為を営むレズビアンとして描いている。
“女性がゲイになるなどあり得ない”と公言し、ゲイに反対する法案を通したヴィクトリア女王への批判。」

《ナパーム弾》

このイメージが残酷だと言う人がいるが、平和な村にナパーム弾を打ち込む方が残虐。
ニック・ウッドによる写真とベトナムのナパーム弾に基づいたイメージ。
これをみて、バンクシー は50代〜60代かな、と思った。

ある意味リサーチャーよりも鋭く本当におこってる事実をえぐっていると感じる。バンクシー 展は、鑑賞者が持ってる不要な「当たり前」を軽快に吹っ飛ばしながら、超速思考を目覚めさせる。

権力による支配
監視社会
資本主義をつかった洗脳

私がもっとも興味を引かれたセクションの1つは、《#CCTV》だ。

《ONE NATION UNDER CCTV PHOTOGRAPH》

「ロンドンのニューマンストリートの郵便局の壁に描かれた作品。「監視カメラの元に国民は1つになる」赤いジャケットをきた少年は警察官に撮影されている。私たちが進歩するほど、監視カメラに管理されて、個人のアイデンティティとプライバシーの権利は喪失する。」

《ストップ・アンド・サーチ》
「公共の場で人を止め、質問し、操作する警察の権力。そしてその権力行使のあり方は、自由と安全についての激しい論争を巻き起こしてきた。」移民へのヘイトクライムや、#BLM の観点から見ると、非常にクリティカル。

観覧中、ある女性がバンクシー が度々登場させる《 FLYING COPPER 》(市民を権力で圧倒する警察や、権力に無自覚的に従う思考を揶揄した作品。警察の格好をした人にアシッド文化の象徴であるスマイリーの顔がのってる)をみて、「かわいい!」と言っていた。彼女を非難しない。しかし、無意識にインスタのイメージばかり追い求めることで起こる思考の停止(権力・メディアからのサブリミナルコントロール)をまざまざと感じた瞬間だった。

《KEEP IT REAL》サンドイッチ型の広告バナーを下げた悲しげな猿。
どんな状況においても自分自身でいることは価値がある。



アンディ・ウォーホールのB面は、バスキアではなく、バンクシーなのかもしれない。

「魂には眼がある。それによってのみ真理を見ることができる(プラトン)」
あなたの眼で真理を見てきてください。

INFO
《バンクシー展 天才か反逆者か》

◉ 会期:
2020年3月15日(日)-9月27日(日)

◉ 開館時間:
10:00~20:30(最終入場20:00)※会期中無休

◉ 場所:
アソビル
神奈川県横浜市西区高島2-14-9 アソビル2F

※ 横浜駅から直結ですが、駅からのサインがなくわかりにくいので要注意。アクセスはこちらをよく見てください>
※ チケット予約制ですが、はっきり言ってかなり密です。ご了承の上、観覧ください。