
こんにちは。
ムーサの芸術研究会・主宰 & 日本文化ラーニングをプロデュースしてます梅澤さやかです。
〈京都人に案内してもらう京都篇〉続いてます。
花人の川瀬敏郎さんが催した花会の会場になったことで知ってから、一度ゆっくり行ってみたかった京都の町屋が《杉本家(京都市有形文化財)》です。
▶︎川瀬敏郎さんについては、以前こちらの記事で紹介しました>
──建物とくらしが一体になった京商家の空気を感じたい方
──日本の空間・建築に興味がある方
おすすめです。
先日、NHKの番組《100分で名著》の《陰影礼賛》(谷崎 潤一郎)の巻で、ロケに使われていました。京商家では、最大規模の大きさ。京の大店の面影をそのままに残しており、足を踏み入れると、まだ大勢の人が行き来してるあり日の賑わいが目に浮かぶようです。
ホテルになることで建物を存続している町屋も多いですが、それですと「すまい」の空気はなくなってしまいます。杉本家は「建物」と言う形をとってますが、そこに一体となった人のくらし方が残っている貴重な場所です。

京都の〈祇園祭〉は、共同体スピリットを清め・ふるわすお祭りです。各町が趣向をこらし競い合う「山鉾(やまほこ)」が、四条通~河原町通を巡行する《山鉾巡礼》は、京都の美術・工芸・装飾・芸能のこころと技を尽くした絢爛豪華さで有名ですよね。
杉本家があるのは、烏丸からほど近く、綾小路に面した通り。下京地域の「矢田町」と言われるエリアで、「伯牙山(はくがやま)」という山鉾を出しています。祭りの時期、杉本家は「伯牙山(はくがやま)」のお飾り場になります。前出の花人・川瀬さんは中京(なかぎょう)の商家出身(京都六角堂に構える120年の老舗花屋・花市さん)ですから、祇園祭りはご自身のスピリットにかかわる特別なお祭りだったことと思います。その記憶を象徴するのが杉本家。格別に華やかだったことでしょう。
— 関連リンク — |
▶︎伯牙山の山鉾をみる> ▶︎杉本家10代目の杉本 節子さんが語る 京商人の住まいと食から学ぶ「ていねいな暮らし」 ──杉本家住宅が、現代に生きるわたしたちに伝えるもの── ※ 杉本家の意外?な歴史もわかります。 |
高田 賢三 氏が亡くなった直後に見かけたある印象的なエピソードがありました。パートナーだったグザビエ・ドゥ・カステラ(ルイ14世から伯爵の称号をもらった貴族の末裔でとても建築に詳しかったそう)に連れて行ってもらったヴェルサイユ宮殿でのこと。日没のちょうどその瞬間、西の太陽の光が「運河」と「鏡の間」で乱反射し、さんさんと輝くヴェルサイユに隠された仕掛けを体験して「建築家の叡智に驚いた」という日経新聞《私の履歴書》の一説です。この体験から賢三さんは建築に魅せられ、最後には数寄屋づくりの邸宅を作るに到るのですが….。
日本では、人が中心に宇宙を操るあり方ではなく、建物とくらしが一体になった自然な空間を生み出しました。それがロイヤル・貴族の上層部だけではなく、商家にまで隅々行き届いていたのが、すごいなと思います。
例えば、今ではみられない深い、深い、軒(大工仕事の自慢どころだそう)。

この深い軒があるからこそ、立体的で奥深い影が生まれます。

当日、ガイドしてくださった杉本家の末娘さんは、「町屋特有の影は、得体の知れない怖い影とは違う」とお話されてました。それを受けて、わたしは〈つなぎ〉のようなものかな、と感じました。得体の知れなさに一気にジャンプするのではなしに、間をつなぐ〈つなぎ〉。顔をうつして庭をみた時の外界の瑞々しさのコントラスト!私は「ハッ…..」としました。光と影のグラデーションの中に自分がいます。「我」が消えてるのです。
障子をあけたり閉めたりすることで、間接的に感じる太陽、風、湿度…..。
杉本家のインスタにも、部屋に挿す光の変化をムービーがありました。
木漏れ日の変化も。
このような、万物の中に人を一致させる方法論は、着物、花、縁側など、さまざまな日本文化に共通していると思います。今後、個別に記事で取り上げていきたいです!

追伸:
杉本家さんは、コロナ対策をしながら、現在、一般公開を随時行っております。
来年秋には大規模な屋根と耐震の修繕をされるそうです。このように人の息遣いが残ったままの貴重な場をつなぐために、莫大な維持費がかかることか…。
一度は足を運びお話を伺ってみてはいかがでしょうか?直接寄付をした日には、京町屋を守る文化遺産サポーターになれますよ!
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Machiya Sugimoto’s (a tangible cultural property of Kyoto City) that retains the remnants of a large store in Kyoto.It is located near Karasuma, facing Ayakoji. It is a space where you can feel the beauty of Machiya by combining the skills and designs of Kyoto carpenters.
If you are interested in Japanese arts and architecture, we recommend that you visit once.
I learned from the fact that Toshiro Kawase, a flower artist, held a flower party.
It was used for shooting in the volume of “In Praise of Shadows” (Junichiro Tanizaki) of the NHK program “100 Minutes of Masterpieces” the other day. The expression of light and shadow are wonderful.
Kenzo Takada was surprised by the wisdom of the architect when his boyfriend took him to Versailles, where the hall of mirrors reflected and shined in the sun at dusk. Its episode on the Nikkei newspaper “My History” appeared after he died.
Not only Katsura Imperial Villa, which is also a royal architecture, but also the aesthetics of a merchant’s house, that makes you feel the aesthetics of the time, is amazing Japanese culture.
The highlight is the contrast between the shadow (three-dimensional and deep) created by the deep eaves (which seems to be the pride of carpentry) that can no longer be seen, and the freshness of the garden when you look at the outside from there.
The youngest daughter of the Sugimoto family who guided us on the day said, “It’s different from the mysterious and scary shadow.” I felt like a “connector”. Instead of jumping to the unfamiliarity at once, it connects the gaps. That’s the keyword to understand the Japanese aesthetics.
I feel that this kind of sensibility leads to various methodologies such as kimono, flowers, and porch.
The venue is now reopen to public tour with appointments. They also have various online events.
It is said that a large-scale roof and earthquake-resistant repair will be done next fall. Is it a huge maintenance cost to connect such a precious place where people’s atmosphere vividly remains.
If you want to see the historical architecture now, it’s worth a visit!
INFO
杉本家住宅
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実際に足を運んで空間を体験しての「あ〜〜〜」の感覚を味わった後、谷崎の《陰影礼賛》から受け取れることも変わりました。気軽に足を踏み入れるならZoomでオンラインイベントも随時行ってますよ。
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