【世界遺産】日本人が知らない死ぬまでに見るべき絶景。天空の城・マサダ(イスラエル)に脳内旅行!

モン・サンミシェルに、マチュピチュ。
有名な世界遺産はたくさんありますので、ご存知の方も多いですよね。
一方、意外と日本人が知らない「絶景」もあります。

実際には足を運べない日々がしばらく続きそうなご時世。
脳内だけでも美しい世界を旅してインスパイアされたり、文化の多様性をお勉強することで、自分たちの文化アイデンティティに気づけたりするのも楽しいのでは?という主旨です。

世界30都市以上をめぐってきた私・梅澤さやかが、実際に足を運んだ中からおどろきを感じた場所を厳選してお届けします。

砂漠の岩山にたつ要塞都市

第1回は、天空の城、ユネスコ世界遺産・マサダ(イスラエル)です。
B.C.120年ごろ造られました。

海外では日本人の概念を「ばっさり」ひっくり返される体験があります。ここもそう。お城といっても、マサダは、死海の西岸・ユダヤ砂漠のどまんなか。岩山の上・天空400mにつくられた要塞都市です。一番上の写真を見ていただければわかりますが、ここをおとすのは難しいでしょう!まさに「難攻不落」。

想像模型です。見ただけでいかつい要塞都市。初期ローマ帝国の古典的様式の宮殿を模してます。

上の動画をご覧ください。
最後のパートにロープウェイが出てきますね。これまたごっつい!

現在ではふもとからロープウェイがあがれますが、当時は「蛇の道」と呼ばれた細道を上がるのみだったというわけです。これでは敵は入って来られないですね。

こんな断崖絶壁のところなのに、4トンもの水をひきこみ貯めて、立派なローマ 風呂まで備えた離宮を増築したのがヘロデ大王(在位:B.C.37 – 4年)です。「天空の城」です。

要塞は1,300mに及ぶ二重の防壁で囲まれ、見張り塔や兵舎、食料を入れたと思われる数百の壺や武器を収めた貯蔵庫、4万㎥の水を貯められる12の貯水槽などに加え、王が居住する豪奢な宮殿も建設された。

宮殿は2棟建てられ、北側のものはヘロデ大王の私邸とされる。崖の縁に位置し、列柱に囲まれた大広間には3つのテラスが、寝室には半円形のバルコニーが設置されていることから、エン・ゲディ(オアシス)や死海、モアブ山などを一望することができる。

もう1棟は、西側に築かれた4,000㎡の宮殿で、執務を行ったり、客人をもてなしたりしたと考えられている。また、浴室にはサウナ、大浴槽、冷水浴槽などがあり、床はモザイクで飾られるなど非常に豪華なものである。

【世界遺産と宗教文化】より
とっても詳しい。すごいなあ。

北の城・模型 Photo by Berthold Werner

かように栄えていたのに見る影もなく、今は切り立った砂山が残るのみです。しかも、激しく崩れている。風雪に耐えて・・・というようなやさしい理由ではありません。そこには、日本人の想像を絶する「はげしい」歴史がありました。

ローマ軍に攻め落とされ、陥落前に女こども含めて「全員自決」したのです。

ひろい!スケール感、大きいのわかりますか?
向こうに見えるのは死海。ここは死海の西側なのです。
向こうに見えるのは死海。ローマ時代の遺跡としては、非常にきれいに残ってる

はげしい歴史① 未だに影を落とす「マサダ・コンプレックス」

— イエス・キリストは、なぜ十字架にかけられたのか?

天空の城。

まさか陥落するはずがない城塞をおとそう。と考えて、実行したのがローマ軍。A.D. 66〜73年の第一次ユダヤ戦争です。

この頃はA.D.に入ってすぐ。つまりイエス・キリストが処刑された後です。イエスはユダヤの民にとっては民族独立の希望でした。しかし、イエス自身はそのように担ぎ出されることを避けた。しかしローマ郡にとっては、支配に抵抗する一派を抑えるために鎮圧する必要があった。そのために、イエスは十字架にかけられましたが、イエスの死後に攻防は悪化、ユダヤ戦争にまで発展しました。

— マサダに残る民族的意志

ローマ人はユダヤ人の土地を奪い、徹底的に破壊・虐殺しました。マサダはその象徴です。だからこそ、ユダヤの民は、城がおちる時に、ローマ人たちの手に落ちるよりも、と全員自決したのです。

マサダ遺跡には、「全員自決しよう」と決めた場所がわかっています。そこには、順番に仲間に殺してもらう「くじ」を書いたメモ跡も残ってます。わたしが2013年に訪れた時、この集団自決をした部屋跡では、由来を聞く前から何故かぽろぽろ涙がでました。そういう時、歴史って生きてるなあって思います。砂漠のぱさぱさした土地ですから、しめった念はございませんが、民族的な意志が強く通ってるのを感じました。

さて、こういう時、あなたならどうしますか?(なんて考えないか・・・)決議の内容が「自決」かどうかは別にして、今回の「緊急事態宣言」を見てても、決まったらそれにならいません?

そんな日本人ですら、このユダヤ人の団結力に恐れおののくわけですが、ところが、そう一筋縄ではいかないのです。「いや、そんな無理だし!」って違う考えから逃げる人もいるのがユダヤ文化なんです。実際、隠れて生き残った女性こどもがいました。

これがその部屋。



— マサダから「さすらい」が始まった。

マサダ以降、イスラエルの民の離散・放浪が始まりました。マサダ陥落は、旧約聖書の「マサダの戦い」にも書かれています。

イラストで読む 旧約聖書の物語と絵画
複雑でわかりにくい旧約聖書のお勉強は、私はこれでしてます。

アメリカでは映画やTVシリーズにもなっているくらい有名ですが、日本ではマイナーですよね。未だに行動原理の根っこに「マサダ・コンプレックス」は生きてるのです。

イスラエルでは、未だに国防軍の入隊宣誓式で(!)「マサダは二度と陥落せず」と唱和されるといいますから。ユダヤの民は、2000年前も現在としてあつかってると考えた方が良さそうです。

はげしい歴史② グレート・リフト・バレーによる分裂

さて、人の歴史はここまでですが…

実は、マサダという場所は、地球からみてもとても「はげしい」土地なのです。ここが面白いので、ぜひ続きを読んでください(笑)

この切り立った岩山。
何故、こんな地形ができあがったのか?

その答えが「グレート・リフト・バレー」です。
アフリカを南北に分断する巨大な「谷」(大地溝帯)です。
これはプレートとプレートの境にできます。

地図で確認してみましょう。

マサダの位置は、アフリカ大陸の北。
下の地図でいう「東リフトバレー」のうち「ヨルダン地溝帯」の「まうえ」です。
青円でかこったところですね。

アフリカ全体を横断して切り裂くグレートリフトバレー。Via: Wikipedia

もう少し寄ります。
そしてプレートと谷の関係を見てみましょう。


プレート=直線
谷(「東リフトバレー」「西リフトバレー」)=点線。  Via: Wikipedia






谷の周囲は、地球の核の熱を受けて高温になったマントル(惑星の核の外側にある層)が上昇してきているため、地熱が高いのです。これがアフリカ大陸を東西に分離する力になっており、南太平洋においては火山活動になったというのが、今のおおかたの考え方です。

これを知った時、わたしは「なるほどー!」と納得するものがありました。
というのも、エルサレムの「嘆きの壁」に行った時に、体感的に「ゴーーー」っと裂け目にいる感じがしたのです。自然は人の考え方に大きな影響を与えますから、このような場所だから、分断が起きても不思議ではないな、と感じたのも確かです。

分断は、一つところから多様なものがわかれて出ずる場所でもあります。
それを証拠に、エルサレムはユダヤ教・キリスト教・イスラム教の聖地です。

マサダにははげしい歴史がありますが、脳内でも旅するとじーんと壮大さを感じます。それは大いなる地球そのものの動きと、聖書の世界まんまの土地に今なお眠れる叡智を感じるからかもしれません。この地にくると、「絶対」への求心(抽象化・上昇・統合)・遠心(具象化・下降・分離)をえんえんと言葉に落とし込んだユダヤのタルムードの感覚もすこしは分かる気がします。

いつかまた行けるのでしょうか?

INFO

マサダ
website
ユネスコ世界遺産>

この近くで《死海文書》が発掘されました。世界史的には有名な場所です。